いろどり


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2022.01.20 取材

宮崎から缶詰を通して人を育み社会に貢献する。

特集

備蓄缶プロジェクト宮崎

災害大国、日本。地震、津波、台風、豪雨、火山の噴火…日本に住んでいる以上、自然災害は私たちの身近にあるものとして受け入れなければならないことかもしれません。

メディアで災害のニュースを目にすると、明日は我が身と気持ちが引き締まるのと同時に、何か災害に遭った方を支援する方法はないかと考えます。

それは日本人として自然な気持ちの表れではないでしょうか。

「備蓄缶プロジェクト宮崎」とは、宮崎の水産加工会社「株式会社器」と「宮崎海洋高校」が宮崎の産物を使って缶詰を作り、それをプロジェクトの賛同企業が購入し備蓄缶として保管。もし自社が災害に遭えばその備蓄缶を使用し、他の地域で大規模な災害が起こった場合、その備蓄缶を株式会社器が賛同企業より回収し、購入した企業からの支援物資として被災地に送られることになります。

このプロジェクトが実際に行われた例として、2018年の西日本豪雨災害では、被災地である愛媛県宇和島市に約2500個の缶詰を届けて、地域の復興の支えにつながったそうです。

残された課題

このプロジェクトは誰にとってもプラスとなるもので、被災地は支援物資を受取り、参加企業は災害の備えができるとともに社会貢献につながり、自社の企業価値を高められます。とはいうものの、いくつか課題は残っており、備蓄缶を各企業より回収する手段、被災地への輸送等のコストといった問題です。それでも、このプロジェクトがこの先多くの企業や経済団体、自治体などの協力を得ることができれば、これらの困難もやがて解決されるに違いありません。

宮崎海洋高校×備蓄缶

缶詰の開発にあたって、株式会社器の西立野社長は「必ず宮崎の産物を使う」というルールを設けて2016年から毎年宮崎海洋高校と新商品の開発を続けています。

2021年は「非常食として1食で主食となる安心安全な缶詰」というテーマで「ハガツオの和風だしリゾット」を食品衛生管理の国際的な手法「HACCP」に適合した原材料を使用し作り出しました。開発に携わった宮崎海洋高校海洋科学科3年生の中山さん・日髙さんは「主食とするため初めてお米を入れたので、お米の種類や炊き具合、備蓄して(時間が経って)も美味しく食べられる水分量の調整が難しかった」「西立野社長から厳しくも熱くご指導いただき、ひとつの商品を作り上げることができ、就職活動でもアピールにつなげることができました」と感謝していました。また商品については「宮崎産のハガツオやタケノコ。お米を使って備蓄もできて美味しく食べられるリゾットを作りました。ぜひ一度、食べてみてください」と自信満々のコメントをいただきました。取材当時(10月)にはお二人とも就職を決めることができたとの事で、企業面接の際にはこのプロジェクトの経験に企業のご担当者も興味を持って聞いていただけたようで、この経験が自信にもつながっていたようです。

続けること、それが力になる。

株式会社 器 西立野社長

様々な企業が他者とのタイアップによる商品開発を実施している。企業・学校など様々なところとタイアップすれば自社だけでは生まれない着眼点を得ることができ、商品価値が上がると考えるからだ。ただ、それを続けていくことは難しく、ほとんどの場合で商品開発が完了した時点で終わってしまうと西立野社長は話す。

「一般社団法人 みやPEC推進機構」の発案により授業の一環で缶詰製造に取り組む「宮崎海洋高校」、「宮崎県漁業協同組合連合会」「みやPEC推進機構」「(株)器」の4者による産・学・官連携による缶詰新商品開発会議が2016年にスタートし、このプロジェクトも当初は1年で終わる予定であったが「終わらせちゃいかんっ!」との西立野社長の熱い思いで、「備蓄缶プロジェクト」を立ち上げる。このプロジェクトに周辺の企業様の賛同を得て、続けていくことに。宮崎産の食材にこだわった缶詰の開発に取り組み、毎年テーマを設け高校生と共に、どんな食材を使うか、どんな味付けにするのか、どうしたら缶詰として売れるものができるのか、一緒に考え商品を作り上げていく。

続けていくこととは何か。共に作り上げた缶詰を販売し続けること、開発し続けることで、地元を愛する人を育て、商品開発に関わった学生が県外に就職し大人になって宮崎に帰って来た際に再びお土産売場で缶詰を目にした時、郷土である宮崎を思い懸命に作り上げたことを思いだし、宮崎を盛り上げていく同志として少しでも力となるきっかけになれば。

2018「備蓄缶プロジェクト宮崎」を発動。

平成30年7月:西日本豪雨災害発生。「備蓄缶プロジェクト宮崎」を発動、企業約130社から約2,500個の缶詰を回収。愛媛県立宇和島水産高等学校に協力依頼し、実習船「えひめ丸」で、被災地の愛媛県宇和島市へ備蓄缶を海上輸送。

株式会社 器

代表取締役 西立野 玲
水産加工食品製造、ドレッシング製造
〒880-0833 宮崎県宮崎市昭栄町199-1
TEL.0985-86-7600 / FAX.0985-86-7676
備蓄缶プロジェクト(宮崎県宮崎市)
https://www.himuka-tamatebako.jp/bitiku_project/

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